高橋尚愛「This is Hisachika Takahashi」
2021. 2. 28 Sun - 3. 28 Sun
今回の展覧会において意図されていることのひとつは、高橋尚愛というアーティストに関して明かされてきた情報に新しい要素を加えることです。それは、彼よりずっと若いもうひとりのアーティスト、奥村雄樹による継続的な試みに続くものです。奥村は、銀座メゾンエルメス フォーラム(東京)における「奥村雄樹による高橋尚愛」展(2016)や2013年にまで遡るそれ以前の複数のプロジェクトを通じて、彼とその作品を探究してきました。奥村による綿密なプロジェクトの開始とほぼ同時期には、ニューヨークのショーン・ケリー・ギャラリーにおいてヒサチカの作品《フロム・メモリー・ドロウ・ア・マップ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ》が展示されたほか、インターネット上ではカーネギー・インターナショナルの共同キュレーターだったダニエル・バウマンが彼について議論を展開していました。私たちが学んできたのは、ヒサチカが生きていたこと――そして生きづつけていること――であり、彼の生が、コンテンポラリー・アートの世界の中心と周縁の両方に位置するという矛盾を孕んだ魅惑的な生でありつづけてきたことです。彼はまずイタリア人アーティストであるロベルト・クリッパとルシオ・フォンタナ、次にアメリカ人アーティストであるロバート・ラウシェンバーグのアシスタントを務めました。ゴードン・マッタ=クラーク、キャロル・グッデン、ティナ・ジルアールによるレストラン「フード」に料理人として参加もすれば、現ホワイト・コラムの前身で、グリーン・ストリート112番地にあった「112ワークショップ」でアーティストとして展示もしました。ヒサチカはたしかに存在感を放っていたのです。
そうした秘話やバイオグラフィは脇に置いて。「This is Hisachika Takahashi」展は、アーティスト本人の個人的なアーカイブから厳選された作品を介して、私たちのヒサチカへの理解をさらに進めるための試みです。本展を構成するのは、1960~1980年代にかけて彼が取り組んだ絵画、コラージュ、そしてコンセプチュアル/フォトグラフィックな記録です。MISAKO & ROSENが最初の発表となる今回の機会を通じて生成したいのは、彼のアーティストとしての位置をより良く理解するための文脈です。彼がこれまでコラボレーターとして関わってきたアーティストたちのより広範なボキャブラリーから隔絶された場所で、そしてまたその内側において、同時に。