ダーン・ファンゴールデン「ART IS THE OPPOSITE OF NATURE」

2022. 10. 9 Sun - 11. 6 Sun

MISAKO & ROSENでは日本での3回目となるダーン・ファンゴールデンの個展を開催します。ファンゴールデンの作品は世界いくつかの美術館にてコレクションされており、日本では国立国際美術館(大阪)が所蔵しています。ファンゴールデンは日本での2回目の個展を果たしたのち、2017年に他界しました。
彼の制作活動は知られている通り、現代美術界に消えない痕跡を残しながら、現在でも関連性を保ち続けています。今回開催する展覧会「Art is the opposite of nature」はこれまで知ることがなかったアーティストの実践と側面を幅広く紹介することを目指しています。
1960/69年と記されたファンゴールデンの作品にはこの間に日本に滞在した前と後の日本の絵画へのアプローチが垣間見る未発表作品です。また無題と題されたユニーク写真作品も展示いたします。このユニーク写真のシリーズは、2011年にオランダのハーレムにある美術館デ・ハーレン・ハーレムにて展示されました。

ダーン・ファンゴールデンの魅力

ダーン・ファンゴールデンの代表的な作品を一瞥して、織物や壁紙や包装紙の図柄や模様と拙速に判断してはいけない。だが、心の底で密かにそのように思うことも重要である。では彼の作品は、デパートの昔の包装紙のデザインとなにが同じでなにが違うのか? 言い換えれば、どこが似ている、ないし似ていないのだろうか?

結論からすると、なにも違わない。だが、すべてが違う。したがって、どこが似ているとも似ていないとも言えない。それは、一体どういう意味なのか? ファンゴールデンの作品はいわゆるポストモダンのシンボルであるシミュラークル(なにかに似ているけれども似ていないサイン)の創始者であり、さらに似ている/似ていないを宙づりの状態にして、極限(なにかに似ているとも似ていないとも言えないサイン)にまで高めたアーティストなのだ。つまり、バロックの天才カラヴァッジョのように、表現のパラダイムの創始者にして完成者の栄誉に与るアーティストである。ファンゴールデンの場合は、そのパラダイムとはポストモダンなのだが。

とはいえ彼は、その栄誉に与ることを喜ばないだろう。なぜなら、彼はあくまで類似を弄び、それを宙づりにすることを愉しんでいるのだから。

1960年代にファンゴールデンが実質的にシミュラークルの金字塔を打ち立てた後、彼を追うようにして1980年代、いわゆるポストモダンのアートがシミュラークルの概念を武器に隆盛した。が、いつの間にか方向を見失い、中途半端なまま朽ち果ててしまった。

シミュラークルを徹底してその極限を実現してしまったアーティストが、ポストモダン以前にいたのだから、そのポストモダンの顔色をなからしめるには十分だろう。ファンゴールデンこそ、シミュラークルを極限に到達させた唯一のアーティストである。

ところで逆説的だが、極限まで行ったシミュラークルは気化して消滅する。その後に残されたかすかな熾火が、不可思議な魅力を放つアートとなる。それが、ファンゴールデンにとっては純粋な遊びだった。この遊びのもたらす情動が至高の可愛らしい軽やかさであり、それが彼の全作品に通底する聖痕である。

市原研太郎

 

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