奥村雄樹

2017. 6. 4 Sun - 7. 2 Sun

オープニングレセプション(サンデーブランチ)6. 4 Sun 13:00 - 16:00
オープニングレセプション終了後も、17時まで営業しております。

プレス・リリース

奥村雄樹はブリュッセルとマーストリヒトを拠点とする日本人アーティストで、時間や基盤やファサードを薄切りにしながら、芸術作品に穴を穿つことによってそれを別の芸術作品へと翻訳することでもっともよく知られています。作品の構造や空間の再定義において、彼が力点を置くのは、社会美学的な争点へのアグレッシブな関心です。奥村は「身元や名前をシャッフルすることで僕のジェスチャーが相対しているのは、フィジカルな条件のさまざまな側面なのです」と述べていますが、経済的な抑圧( 彼はしばしば見捨てられた、忘れられた構造に取り組みます)や所有権をめぐる動機( 彼は他者の芸術作品を引き継ぐにあたって原制作者からの許可を得ることも得ないこともあります)はそのうちのたったふたつに過ぎません。パーソナルな関心をめぐる語彙の一式を携えて芸術に取り組むなかで、奥村は、いくつかの直接的なアクションを実行してきました。たとえば、東京の近代美術館で複数の翻訳者を人々へ差し向けたり、ウィールズやパウル・クレー・センターの内部空間といった思いも寄らないロケーションにおいて子どもたちのエクササイズに舞台を提供したりといったことです。彼の悪名は、無身元とゲリラ的な戦術を混合するとき、もっとも高まります。たとえば2015年、東京の上野の森美術館における一春の乗っ取りがそうです。そのとき奥村は、展覧会の実行委員会に捕捉され、多数の苦情によってコラボレーターたちと分断させられるまで、いくつかの試みを続けました。前回、2015年のMISAKO & ROSENにおける彼の個展の作品は、大いに喧伝された、都市の特異点でした。彼は、スロバキア人アーティストのローマン・オンダックの作品を通じて、壮大な言論のトンネルを切り開いたのです。

I.C.CとMuHKAのディレクターを歴任したフロア・ベックス氏からの支援と行政からのほぼ皆無の圧力を受けながら、このほど奥村は、主要な映像作品をブリュッセルで完成させようとしています。《帰ってきたゴードン・マッタ=クラーク》と題されたこのプロジェクトは、南大塚の路面電車の目の前、MISAKO & ROSENにおける展覧会と連動しながら、この夏、完成へと近づいています。それを構成するのは、ほとんど音楽の譜面のように構成された、一連の精巧な穴と切り抜きの数々です。そこでは、特定の要素の一式が、諸レイヤーを上下に貫きながらその進行を展開させています。複数の時間を越えて歩を進めるなかで感じられる、凄まじい方向感覚の喪失の経験は、狼狽させるような死の除外によって、通常の生の構造においては可視化されていない視座から生み出されるものです。

現在まで、この作品は一般には未公開となっていますが、このほど7月1日に、東京のstatementsで少人数のグループを対象として上映されます。

そしてまた、図解的な記録およびプロジェクトの記述による作品や彫刻的なフォトグラフィーで構成された、奥村の展覧会も開催されます。展覧会は、6月4日にMISAKO & ROSENでそのオープニングを迎えます。