奥村雄樹「くうそうかいぼうがく・落語編」
2010年8月22日(日) - 9月19日(日)
オープニングレセプション(サンデーブランチ) 8月22日(日)12:00-17:00
[ 落語 家笑福亭里光氏による演目 ]
1日2回公演:第1回 13:00/第2回 15:00
(公演中の20分間はギャラリーへの入場、電話応対ができなくなります。
開演10分前にはお越し下さい。)
問い合わせ:MISAKO & ROSEN 03-6276-1452
奥村雄樹は、1978年青森県生まれ。現在は東京を拠点に、国際的なレジデンスプログラムに参加しながら制作活動を行う。2006年にアジアン・カルチュラル・カウンシルによるニューヨークのアーティストインレジデンスに参加したのに続き、これまでにダブリンのアイルランド現代美術館、スイス・コルビエールのラボラトリー・ビレッジ・ノマド、台北国際藝術村(共に2007年)をはじめとする世界各地のアーティスト・イン・レジデンスのプログラムに積極的に参加してきました。
日本国内では、森美術館(2007年)、東京オペラシティー・アートギャラリー(2004年)の企画展に参加。MISAKO & ROSENでは、過去に奥村とウィル・ローガンの二人展を開催しています(2007年)。2009年にはボーダレス・アートミュージアム NO-MA で開催の「この世界とのつながりかた」に出展、青森県美術館の「ラブラブショー」では、ミュージシャンの曽我部恵一と共同制作を発表するなど近年、様々な形態で活躍しています。青森県美術館で開催中の「ロボットと美術 機械 x 身体のビジュアルイメージ」展にも出展中です。
また、彼の映像作品はデンマーク、スペイン、中国、ノルウェー、フランス、オーストラリア、米国など諸外国のスクリーニングイベントで上映されています。 MISAKO & ROSENにて2回目となる今回の個展では、昔話「善兵衛ばなし」をベースに、落語家・笑福亭里光氏に創作落語を作ってもらうというプロジェクトになっています。奇妙な解剖学的構造に基づいた知覚の伸縮の物語と本人が言うように「くうそうかいぼうがく」は奥村の最近の主要テーマとなっておりシリーズ化しています。このシリーズや最近作では、他者と関わって作品を制作するという方法を最近良く用いています。
また本展覧会では主題となった「善兵衛ばなし」をベースにプロの落語家の笑福亭里光氏によって創作落語を披露してもらいます。こうして個展のオープニングで披露された創作落語は、実演の記録となり特製高座、写真やドローイングと共に再構成されたインスタレーションに仕上がる予定です。
「くうそうかいぼうがく・落語編」について 奥村雄樹
今回僕は、子供のころ「まんが日本昔ばなし」で見て衝撃を受け、以来ずっと心に残っていた昔話「善兵衛ばなし」に取り組むことにした。
この昔話では、現実には「ありえない」解剖学的な構造に基づいて、知覚の対象が空高くまで遠ざかったり、逆に極限まで近づいて体内へと裏返ったりする。それが子供心に衝撃的だったのは、大げさに言うと、僕自身のふだんの体感を振り返ったときに、ふつうに「ありえるかも」と納得できたからかもしれない。なんせ僕は、自分の体の解剖学的な構造を直に見たことがなかったのだから。今もないけど。
ところで、落語にも荒唐無稽な解剖学的構造を扱った演目は数多い。「犬の目」「頭山」「首提灯」など。落語で実際に目の前にあるのは、座布団に固定された噺家の身体だけ。この形式それ自体が、言葉(物語)の上でのみ可能なありようを表現するのに適しているのだろう。僕たちの素朴な実感として「あり」であるかぎり、落語はどんな身体構造もいきいきと描き出すことができる。
だとしたら、「善兵衛ばなし」を落語に変換するとどうなるだろう。この思いつきを出発点に、今回のプロジェクトは始まった。笑福亭里光さんという素晴らしい噺家さんとの出会いもあった。僕たち人間の素朴な実感において、身体の構造というものがいかにゆるい可変性を持っているのか。笑いをもたらすと同時に、このことを浮き彫りにする作品になるといいなと思う。