安村崇/江口悟「Things in a place」

2008年12月15日~1月18日(冬期休廊 12月27日~1月5日)

オープニングレセプション12月15日(月)18:00~20:00

このたびMISAKO & ROSENでは、第5回目となる二人展シリーズ「Things in a place」を開催いたします。この二人展は、2007年に第一回目の「森本美絵・茂木綾子」が開催され、その後「ウィル・ローガン・奥村雄樹」、「竹崎和征・マヤ・ヒュイット」と続き、2008年には「シャギャーン(ピエール&アンリ・シャギャーン)」を開催しました。本展覧会の「Things in a place」もその一環であり、東京を拠点にするフォトグラファー安村崇とニューヨークを拠点にするアーティスト江口悟の作品を紹介いたします。

安村崇は、日本国内での幅広い活動に加え、国際的な展覧会にも勢力的に参加しています。2006年にマドリッドで開催された「フォトエスパーナ」に参加する他、国内では、2005年にはパルコ・ミュージアムで個展、2004年には森美術館にて開催された「六本木クロッシング」に出展しています。

あらゆる写真がそうであるように、安村崇の写真は、それそものがオブジェクトです。ここに展示される作品は、二面鏡として機能し、ひとつは、作品そのものを、もうひとつは、作品が収まる世界を、映します。そして、あらゆる写真がある程度そうであるように、安村の写真の還元的な性質は、作品の内と外における構成の巧みさを高調しています。ここに展示される作品は、日常に内在する抽象性にフォーカスを当てたものです。色彩や形状は繰り返され、被写体となりますが、この事実により、ある隙間が生じます。写真の画は、この世界のどこに帰属すればよいのでしょうか?この隙間はやがて、写真というオブジェクトによって埋められていきます。だから空間には、記録とオブジェクトが同時に現れるのです。

今回は、風景や屋外を写した作品シリーズが展示されます。これら近年の作品に見られる空間の広がりに、安村の作家としての発展を見る事ができるでしょう。

江口悟は、2004年にニューヨークのスクール・オブ・ヴィジュアルアーツを修了後、近年ではエリック・シャイナーキュレイションによるジャパンソサイエティーの展覧会「Making a home」(ニューヨーク 2007-2008)に参加しています。

江口悟は、彫刻的空間の中に絵画を再現することで、ドローイングの存在を置換させています。彼は、紙上の表現でなく、紙をオブジェクトとして使い、オブジェクトを作ります。絵画で構成される空間の彫刻は、かえってあるものの不在を際立たせます。それは、鑑賞者がオブジェクトを実際手に取って見る可能性を考えた時、より明白となります。空間性を想起させる彫刻とは対照的に、その重さや形を手に感じながら、再現された以上の現実感を掴みきれないのです。江口の作品は痕跡を重視し、彼の非構築的なスタイルは縮尺に準じたものであるにかかわらず、混乱させ、方向転換させるためにだけ機能します。彼は今回、ギャラリーの空間と安村の写真の文脈を念頭に選択した作品を展示します。

この展示では、当ギャラリーが抽象表現に対し行って来たアプローチをさらに追求します。安村崇の写真と、ジャンルを縦断する江口悟のオブジェの内に、また互いの間に生じるダイアローグは、物事を複雑にも、明快にも見せてくれるでしょう。このギャラリーの中で、鑑賞者は、作品たちと同様に、場所を構成する一要素以上でも以下でもありません。