奥村雄樹「ローマン・オンダックをはかる」

2015年2月8日(日)- 2015年3月8日(日)

奥村雄樹(1978年生まれ)による作品《ローマン・オンダックをはかる》(2015)のあり方を決定づけるのは、ローマン・オンダックその人です。彼が招待に応じて会期中にその姿を現せば、スタッフは彼の背丈および名前と計測日をギャラリーの壁にマークします。まっさらな白い空間として始まりながらも、ある時点を境に/ある期間に渡って、特定の人物の痕跡がギャラリーに留まるかもしれません。

奥村の制作活動はいわば「身代わり」をめぐる実践ですが、オンダックをそのプロセスに含み込むことは、パフォーマンス・ベースのアートが辿ってきた歴史を受け継ぐものです。アーティストたちは、作品が生まれる現場に他の人を招き入れ、アクティブに参加してもらうことで、「作者/他者」および「作る/見る」という慣習的な区分けを乗り越えようと試みてきました。

オンダックによる元々の作品《宇宙をはかる》(2007)は、世界のスケールを測定したいという人類の長年の欲望にそのタイトルを差し向けつつ、子どもの背丈を柱や扉に記録するという家庭内の習慣をパブリックな出来事へと変換します。そして《ローマン・オンダックをはかる》は、さらにそれを、作者性/観客性の本質に関する考察へと再変換します。そのとき、潜在するただひとりの参加者を通じて、日常すなわち人生とアートが溶け合っていきますが、両者の合流地点の探求こそ、奥村のアーティストとしての実践の中軸を成すものです。